環境熱発電と量子融合エレクトロニクス:野村政宏

環境熱発電によるモニタリングシステム開発

いたるところにある未利用熱を有効利用する熱電環境発電が注目されています。熱電環境発電デバイスを搭載したセンサーノードを実現することで、社会に膨大な数のエネルギー自立型センサーを設置でき、スマート社会化に必須な物理空間とサイバー空間をつなぐことができます。本研究室では、低環境負荷なシリコン系材料にナノ加工を形成することで熱電変換能を飛躍的に高める研究を進めています。ドイツのフライブルク大学や多数の企業と共同研究を行っており、新しいデバイス応用として日経産業新聞などで報道されました。

ナノスケール熱伝導の物理と熱流制御技術

ナノスケールで顕著に発現するフォノンの弾道性と波動性を利用した弾道フォノニクスと熱フォノニクスを研究し、従来のフーリエ則では実現できない高度な熱流制御や熱伝導制御技術を発見・開発しています。パルスレーザなどを用いた独自開発のマイクロ時間領域熱反射測定法によってナノスケールで現れる特徴的な熱伝導の物理を観測しています。世界で初めて、フォノンの弾道性を利用した指向性熱流の生成と固体集熱の実現に成功し、伝熱工学に新展開をもたらしました。

量子融合エレクトロニクス

フォトン、エレクトロン、フォノン、スピンなど、一種類の量子については、単一で検出・制御が可能です。これらの量子が二つ連成した「ポラリトン」と呼ばれる新しい固有状態を形成すると、両者の性質を併せ持った特殊な準粒子となり新しい物理現象を実現できます。我々は、光とフォノンが連成した表面フォノンポラリトンによる熱伝導に関する研究を進めています。窒化シリコン薄膜(30 nm)において、薄膜の厚さが薄くなるほど熱伝導率が高くなるという通常とは反対の減少を観測し、表面フォノンポラリトン熱伝導がフォノン熱伝導を上回ることを世界で初めて実証しました。熱伝導、対流、放射の三つの主要な熱輸送機構に加え、薄膜材料においては表面フォノンポラリトンが重要な放熱チャネルとなることを示しました。ナノ構造を多く含むデバイスでの放熱問題の緩和が期待できます。

電気の回廊