レーザ物理、レーザ計測、設備診断:藤井隆

革新的レーザ計測技術の開発と高電圧研究への適用

レーザは、高い指向性(高エネルギー密度、長距離伝送)、単色性、高ピーク強度等の特長を有します。特に、パルス幅がフェムト秒の高強度レーザ光は、強い非線形効果のため様々な新しい物理現象を生じます。本研究室ではそれらの物理現象の解明や、レーザの特長を生かした様々な応用研究を行っています。研究室は、熊田亜紀子教授、佐藤正寛講師と共同で運営しています。


超短パルスレーザを用いた電界の非接触・非侵襲計測技術

非接触、非侵襲に電界を計測する技術の確立は、放電や絶縁に携わる研究者にとって悲願の技術です。気体のような等方性の材料中にレーザ光を集光すると、三次の非線形光学効果により、外部電界とレーザの光電界の相互作用によって第二高調波が発生します。また、パルス幅がフェムト秒領域の超短パルス高強度レーザ光を用いると、様々な非線形現象が生じます。本研究室では、これらの非線形現象の解明を行うと共に、それらを利用して、電界の三次元分布を非接触・非侵襲で計測する技術の開発を行っています。

レーザプラズマを用いた遠隔・非接触計測技術

レーザ光を測定対象物に集光することによりプラズマ化し、このプラズマからの発光を分光・解析することで,対象物に含まれる元素を測定することができます。このような測定方法はレーザ誘起ブレイクダウン分光法(LIBS: Laser Induced Breakdown Spectroscopy)と呼ばれています。LIBSの主な特長は、その場で計測ができること、対象物から離れた位置からの測定(リモートセンシング)が可能なことであり、当研究室では、このLIBSを用いた様々な計測・診断技術に関する研究を行っています。これまで、ポリマーがいしの含有成分を10 m離れた位置から計測することにより、ポリマーがいしの劣化を遠隔診断する手法の開発に成功しています。

レーザ波面計測によるアーク放電診断

現在、高圧系統で利用されているガス遮断器では温暖化係数の高いSF6ガスが主に使用されています。代替ガスの開発を行うためにはSF6ガスを始めとする各種ガス中のアークの消弧機構を解明する必要があります。そこで、レーザ波面測定装置を駆使して、アーク放電内部をさぐっています。例えば、マイクロレンズアレイから構成される波面の空間微分を計測できるシャックハルトマンセンサを用いることで、アーク放電中の電子密度測定することができます。また、バンドパス空間フィルタを用いたレーザ波面測定装置により、アーク内におけるガス乱流構造の可視化にも成功しています。その結果、乱流構造はSF6が最も細かく、次いでCO2、Airであり、SF6の高い消弧性能は、微細な乱流によるエネルギー損失の増大に起因することがわかりました。

電気の回廊