生体・医療応用に向けたソフト・フレキシブルデバイスの開発 :李成薫

皮膚感覚に影響を与えないスキン圧力センサ

指の動きを正確に計測しデジタル化することは医療や介護、スポーツ、ヒューマンマシンインターフェースなど幅広い分野で重要である。しかし、センサを装着すると感覚に影響を与えてしまうことが課題とされていた。皮膚の感覚が損われないように素材の厚みを薄くするとセンサが壊れやすくなるため、耐久性を確保することはさらに課題だった。当研究室では、指先に直接貼り付けても皮膚の感覚に影響を与えないナノメッシュ圧力センサを開発している。センサの装着が皮膚感覚に及ぼす影響を定量的に評価し、ナノメッシュセンサーを指先に貼り付けても、貼り付けていない場合と同等の把持力を示すことを科学的に実証した。さらに、水溶性高分子を含侵させた非常に薄いポリウレタンナノメッシュ保護層を用いることで、機械的耐久性を劇的に向上させることに成功している。従来のゴム手袋タイプの圧力計測とは異なり、指先の感覚を損なわずに繊細な指先の接触圧を正確に計測できるため、今後、医師や職人の指技のデジタルアーカイブなどさまざまな応用が期待される。

高い耐久性と超柔軟性を兼ね備える歪みセンサ

生体のように柔らかく、かつ常に運動しているものが測定対象の場合、柔らかく、伸びる素材でセンサを作ることが重要である。さらに、表情のように皮膚の細やかな変化を計測するためには、わずかな皮膚の伸縮によって生じる非常に弱い力でも自由に変形できる超柔軟なセンサが求められる。当研究室では、超柔軟性と高い耐久性を兼ね備える歪みセンサを実現し、皮膚の本来の動きを阻害せずに、顔の細やかな歪みを多点で正確に計測することに成功している。電気紡糸法にて形成した数層のポリウレタンナノファイバーを非常に薄いジメチルポリシロキサンで強化することで、柔軟性を保ちつつ顔の歪で壊れない機械的耐久性を実現した。今後、喜怒哀楽などの表情変化を読み出すことが可能なウェアラブルデバイスへの応用が期待される。

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