データ共有・活用基盤 :橋田浩一

分散PDS

パーソナルデータの管理運用をデータ主体本人に集約することにより、本人(のAI)がそのデータを自ら活用するとともに安全に他者と共有して活用することができれば、事業者は大量のパーソナルデータを保管するコストやデータ漏洩のリスクを免れ、個人は自分の利益を最大化するように自分のデータを活用できるので、個人向けサービス全般の価値が高まるだろう。PLR (personal life repository)は、個人によるそのようなデータの管理運用を支援するミドルウェアであり、利用者が何億人でもアプリの保守コストだけで運用できるスケーラビリティの高い仕組みである。個人情報保護法制の改正や教育のIT化や医療制度改革に伴い、さまざまなパーソナルデータが個人に集約される可能性があるが、PLRはそれを促進して価値を最大化するための最も安全で安価な手段と考えられる。本研究室では、PLRのさまざまなサービスへの応用や関連する社会制度について研究している。

分散セマンティックオーサリング

文書による情報共有と合意形成は社会の運営に不可欠であるにもかかわらず、成人の平均的な文書読解能力はかなり低い。この問題はAIや教育では解決しないので、作成・読解が容易な新しい形式の文書が必要であり、図のようなグラフ文書がその有力な候補と考えられる。単独の著者による文書作成においても複数の著者による共同作成においても、グラフ文書は従来のテキスト文書よりも統計的有意に質が高いことが、当研究室での実験によってわかっている。したがって、適切な編集アプリを提供してグラフ文書を普及させれば、社会全体の知的生産性を飛躍的に向上させることができるだろう。そこで本研究室では、PLRを組み込むことにより安全・安価に文書データを共有して共同編集できるグラフ文書編集アプリ(セマンティックエディタ)を開発している。さらに、グラフ文書に基づく多様なサービスを相互連携させたり、多数のグラフ文書データを集めて統計分析等により知識獲得したりするための研究を進めている。

電気の回廊