量子ナノフォトニクスとトポロジカル波動工学:岩本敏

高品質フォトニックナノ構造の実現とその応用

フォトニック結晶とは光の波長程度の屈折率周期構造をもつ人工光学材料であり、それを利用することで従来の材料では困難であった数々の光制御技術や特異な光学現象などの実現が可能となります。フォトニックナノ構造により人工的に輻射場を制御することで、物質の光学応答を制御することが可能になります。この効果を利用することで、光デバイスの高効率化や従来にない光学応答の実現とそれを利用した新規デバイスの実現や量子情報デバイスへの応用が期待できます。
 我々は、蓄積された知見と高度な技術に立脚して、高品質な半導体フォトニックナノ構造の実現とそれらを利用した物質と光の相互作用の物理の探求や高効率レーザや量子情報素子に関する研究を推進しています。最近では、ダイヤモンドナノフォトニクスとその量子技術への応用を目指した基盤技術開発も進めています。

フォトニックナノ構造を用いた発光制御や量子情報デバイスの開拓

物質の光学応答は自身がおかれた輻射場環境に依存します。そのため、フォトニックナノ構造により人工的に輻射場を制御することで、物質の光学応答を制御することが可能となり、光デバイスの高効率化や従来にない光学応答の実現とそれを利用した新規デバイスの実現などが期待できます。
 我々は、量子ドットなどの発光体を含むフォトニック結晶やフォトニック結晶ナノ共振器などを用いて、その発光制御とそのデバイス応用、共振器量子電気力学(Cavity Quantum Electrodynamics, Cavity QED)などの物理の探求や量子光学素子への展開などに取り組んでいます。

光のスピン軌道相互作用とその応用

電子と同じように光も角運動量を持ち得ます。近年、光の角運動量が関係する多くの興味深い現象が見いだされ、その理解と応用を目指した研究が進んでいます。
我々の研究室でも、光の角運動量制御や光のスピン軌道相互作用の基礎と応用に関する研究も進めています。量子情報技術への展開を目指したフォトニック結晶ナノ共振器を用いた電子スピンと軌道角運動量を有する光のインターフェイスや、光回路への応用が期待される一方向発光素子、光スキルミオン発生器などのユニークなデバイスの実現をめざしています。

トポロジカルフォトニクス

周期構造中の光や、周期構造中の音波や弾性波の伝搬は、結晶中の電子と同様にバンド構造に支配されます。物性科学では、このバンドのトポロジカルな性質(バンドトポロジー)が新たな物質相の発現などに重要な役割を担っています。このバンドトポロジーの概念をフォトニック結晶中の光や周期構造中の音波や弾性波に適用し、新たな機能を発現・応用しようとするのが、トポロジカルフォトニクス、トポロジカルフォノニクスと呼ばれる新しい分野です。
 我々は、半導体フォトニック結晶技術を駆使し、半導体トポロジカルフォトニクスの開拓を目指した研究を理論・実験の両面から推進しています。世界初のトポロジカルナノ共振器レーザの実現やトポロジカルスローライト導波路の提案。実証などの成果を挙げています。

電気の回廊