有機材料を用いたフレキシブルセンサの研究:横田知之

極薄な有機光デバイス

フィルム基板上に形成されたデバイスは、従来のエレクトロニクスにはない高いフレキシブル性や軽量性といった特徴を持っている。このフレキシブル性と軽量性の特徴を最大限生かすためには基板となるフィルムを薄膜化することが重要である。当研究室では、特に有機光素子に着目し、これらの素子を極薄基板上に形成する技術を開発している。素子形成の際に、低損傷プロセスや溶液プロセスを用いることで、これまでに1 µmという極薄フィルム基板上に有機発光素子や受光素子を実現している。これらの素子のセンサ応用に向けて、特性改善や安定性改善といった研究に取り組んでいる。

極薄な有機光デバイスのセンサ応用

光を用いたセンシングは、従来の電気信号と異なり、体外より非侵襲で体内の情報を得ることができるために様々な生体・医療応用向けのデバイスとして活用されている。当研究室では、独自に開発した極薄な有機光デバイスを用いたセンサ応用に向けた研究開発を行っている。特に、研究室で開発が可能な有機発光素子や、受光素子、薄膜トランジスタなどの複数の素子を同一基板上に形成することで、機能性を付与してきた。これまでに光刺激用の極薄光源として応用や、太陽光で動作可能な脈拍センサなどを実現してきた。

シート型イメージセンサ

光を用いた重要な応用例としてイメージセンサがあげられる。我々の研究室では外部企業と連携することで、生体認証に向けたフレキシブルなシート型イメージセンサの開発を行っている。これまでに、低温ポリシリコン薄膜トランジスタと有機受光素子を集積化することで、指紋や静脈の撮像を行うことが可能なセンサシートを開発してきた。さらに、このイメージセンサは、指紋の撮像と同時に脈波のマッピングを行うことも可能である。

印刷可能な高感度温度センサ

当研究室では、新しい機能性を持った材料開発にも取り組んでいる。特に印刷プロセスで作成可能なセンサ材料の開発に取り組んでおり、これまでに体温付近で大きく抵抗変化を起こす感温センサ材料の開発に成功している。このセンサ材料は、融点を制御可能な新奇のポリマー材料を新たに合成し、その中に導電性の粒子を分散させることで機能性を実現している。

高分子上に成膜可能な二次元配向膜

薄膜形成において、その下地となる基板の表面状態の制御は重要である。従来、酸化物や金属の表面状態は、化学結合を用いて自己組織化単分子膜と呼ばれる分子単層膜を基板上に形成することで、表面エネルギーの制御などを行ってきた。一方で、プラスチックをはじめとする有機材料においては、結合力が弱く配向膜を形成することが難しかった。当研究室では、東京工業大学の福島教授のグループとの共同で、三脚型のトリプチセン分子を用いることで、化学結合などを用いずにプラスチック上に数分子の配向膜を形成する技術を開発した。これらの技術を様々な有機エレクトロニクスに応用することで、デバイスの高機能化が期待されている。

電気の回廊